ヒアリング、難しいと思っていませんか?私もそうでしたが、営業にとって必要な情報を収集することは非常に大変です。
私の場合、営業をスタートしてしばらくは、ニーズを聞くことで精一杯でした。しかし、徐々にニーズ以外にも、相手が決裁者なのか、競合との付き合いはあるのか、と聞けることが広がっていきました。
成長するにつれ、仮説を立てるとか、深く聞くとか、色々なことができる様になってきました。
とはいえ、毎回の商談で同じことが聞けるわけではありません。また、営業が聞くべきことは本当に色々とあります。そこで今回は、そうしたヒアリングの項目の中でも、どんな業種にいても必ず聞くべき5つのポイントについて紹介します。
ヒアリングのBANT-Cとは?
営業をしている方であれば、このBANT-Cという単語を聞いたことがある方もいると思います。ある企業ではBANTと言っていることもありますが、今回はBANT-Cで通します。(バントシーと読んでください)
このBANT-C、何のために聞くのでしょうか。大事な理由が3つあります。
- 受注確度を計算し、適切なシナリオを検討するため
- 営業としての優先順位をつけるため
- 上司や先輩から適切なアドバイスをもらうため
です。この3つのために、まずはBANT-Cを聞くようにしましょう。
ではBANT-Cの要素について、一つずつ確認します。
B:Budget(予算)
BはBudgetのことで、予算を意味します。つまり、相手の予算をしっかりと確認しようということです。
「よし、予算を聞けばいいのか!」と意気込んで「ご予算はいかほどでしょうか?」と聞くと、人によってすぐに教えてくれる人とそうでない人が出てきます。
そうでない方の場合は、まだ手の内を明かしたくないのかもしれませんし、知らないだけかもしれません。こちら側の見積もりイメージを伝えたり、競合の金額を伝えたりしながらお客様の予算を把握していきましょう。
また、予算を教えて頂いたとします。しかし、実はここで気を付けて欲しいことがあります。
予算には3つの概念がある
「誰の・どの部署の」予算なのか、「何のための」予算なのか、「いつの時点での」予算なのか、という3つの概念があります。
例えば、大きな考え方で「会社の予算」があるとします。それは各部署に割り当てられます。営業部には○○円、人事部には××円、という形です。このように部署に配分され、さらに部長や課長に渡されます。
これが「誰の、どの部署の」予算なのかという概念です。
次に、予算には「使用目的」が決まっています。システム投資のため、人材採用のため、もちろん足りなくなって申請することもありますが、基本的には期初に決まった予算から大きく動くことはありません。
そうすると、高額であればあるほど、購入に必要な予算を、前の期に申請する必要が出てきます。営業はそのためにも、前倒し行動が重要です。
そして、最後が、その金額が「いつの時点での」予算なのかということです。期初に決まっていた金額なのか、色々使って、今残っている金額なのか。それによって提案も変わるはずです。
例えば今期の残り予算で○○しましょう、来期は×円申請してください、それで△△しましょう。というイメージです。
A:authority 権限、役職
相手の権限、役職を確認しましょう。部長、課長、係長、シニアマネージャー、ゼネラルマネージャー、、、と様々な役職があります。役職名称は会社ごとに自由に決められますから、同時にその役職が持つ権限を把握する必要があります。
役職は名刺に書いてあります。でもそれだけではありません。可能であれば、会社内の異動についても確認しましょう。昇進が分かっていれば、その方をメインターゲットとして営業することができます。
また権限も、会社によりバラバラです。通常、決裁可能額に応じて役職が上がります。決済が可能な金額、影響範囲を共に確認しましょう。
また、権限は予算だけではありません。部下の評価や異動の権限、他部署への影響力、参加している会議のレベルなど、様々な観点から見ることが可能です。
時には、お金は動かせないけど人を動かせるということが出てきます。それが分かれば、チームを作ってもらってディスカッションからスタートするなど、アプローチ方法も変えられます。
N:Needs(購入希望、検討、自社が解決できる課題を抱えている)
ニーズについては、おそらく営業をしていると一番馴染みがあるものでしょう。ニーズがある、ない、なんてよく言いますよね。
多くの営業は「ニーズがない」という判断が早すぎると感じます。
研修で「ニーズ」とは何か、という質問をすると、答えられる営業が少ないのが現実です。
また、購入を希望している、または検討しているという状態がニーズがある状態であると漠然と捉えている人が多いです。
ニーズの意味を捉えなおす
ぜひニーズを考える際は、それに加えて「自社が解決できる課題を抱えている」かどうかを考えてください。この一言があることで、ニーズの顕在ニーズ、潜在ニーズというものが分かるようになります。
相手が「課題を抱えている」けど検討していない、または気づいていないという状態が潜在的なニーズがある状態です。
これが分からないと、簡単にニーズがないと考えて、その顧客へのアプローチをやめてしまいます。もちろん、他に売り先があるのであればいいのですが、実際はニーズが顕在化していることはどちらかといえば少数です。
また、潜在ニーズが顕在化していく過程を共にした営業は、顧客からの信頼が厚くなります。結果的に売上になることが多いので、ぜひ潜在ニーズを無視しないようにしましょう。
T:Timing(時期)
タイミングとは、相手にとって決めやすい時期を指します。例えば、年度末や期末に予算が余っているから使う、というケースがあるのですが、このタイミングで提案すれば簡単に受注できます。
いつ、いつまでに決める必要があるのか。いつまでに稟議を通す必要があるのか。いつまでだったらその人が部署にいるのか。このような時間の変化に敏感になりましょう。
相手のタイミングを計るためのポイントは、社内の様々なイベントです。締めの月、半期はいつなのか、評価は四半期ごとなのか、予算申請は何月か、といった形で、その会社におけるイベントスケジュールを押さえましょう。
C:Competitor(競合の存在)
BANT-Cの最後が、Cです。これは競合を指します。顧客のところに競合他社が営業をかけているか、どの程度話が進んでいるか、提案のポイントはどこかを探りましょう。
競合には、直接的な競合と間接的な競合がいます。
直接的な競合とは、同種類のサービス、商品を売っている会社です。業界が同じ、と言うと分かりやすいかもしれません。例えば日本生命さんと朝日生命さんは、おなじく生命保険業を営んでいます。
間接的な競合とは、扱っているものが違うけれど、解決しようとしている状況や得られる効果が同じ、または近いというものです。先ほどの保険を資産形成と捉えれば、不動産会社や証券会社も競合になってきます。
ニーズが顕在化している企業ほど、直接的な競合を検索したり、営業を呼んだりしています。ですから営業も、間接的な競合のことを知ろうともしないことが多いです。
間接的な競合を知る意味とは
営業をしていて、いつの間にかニーズがなくなっている時というのは、間接的な競合が関係していることが多いです。もっというと、間接的な競合に気を配れないということは、顧客のニーズの本質を外していると言えます。
間接的な競合になりうるのは、「課題を解決できるサービス」です。商品単位で考えるのではなく、顧客の課題を見ていれば、間接的な競合がイメージできます。
例えば皆さんはシステム会社に所属し、業務効率化のシステムを提案しているとします。では業務効率化を図りたい会社の悩みは何でしょうか?業務が非効率である、という言葉の裏返しだけではなく、それによって何が起こっているのか、または何が原因なのかを見ていきます。
例えば、業務効率が悪いので、「残業が増えている」とします。そうすると、顧客は「残業を減らしたい」から「業務効率化のシステム会社を呼んだ」かもしれません。
そうするとコンサル会社や、BPOの会社、人を増やして残業を減らすのであれば人材広告や派遣、紹介会社も競合になり得ます。
同じ残業を減らすでも、システム会社と人材採用ではまったくアプローチ方法や営業先が変わります。人材採用の営業は、通常人事にアプローチしますから、システム会社とはバッティングしないでしょう。
しかし、人の採用が早ければシステム導入は後回し、となりかねません。これが間接的な競合を知る意味です。
まとめ
いかがでしょうか。BANT-Cをしっかりと聞くことの重要性が分かって頂けたかと思います。
繰り返しになりますが、BANT-Cを聞くのは
- 受注確度を計算し、適切なシナリオを検討するため
- 営業としての優先順位をつけるため
- 上司や先輩から適切なアドバイスをもらうため
という3つの目的のためです。ぜひ、しっかりと確認し、営業成績を高めてください。
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